整形外科で使うスクリューってなに?前編~骨折治療~【ちょこっと医学】
はじめに
整形外科では手術の時に様々な道具・機械を使います。
整形外科の手術を一言で言うと、「大工仕事」です。
病院にいる大工さんと言っても過言ではありません。
そんな整形外科医が使う道具についてみていこうと思います。
今回は「スクリュー」について取り上げてみます。
資産形成とはあまり関係ないですが、読んでいただければ幸いです。
よろしくお願い致します。
スクリューとは
スクリューは主に骨折で骨折部を固定するために使用します。
DIYでも板と板を固定するときに使うかと思いますがそれを骨に対して行っています。
整形外科では「釘」はあまり使わず「スクリュー」を使います。
釘とスクリューの違い
クギ(釘)nail
-
らせんのねじ山がない → 抜けやすい
-
ハンマーで打ち込む
-
横からの力に強い…建築などで使用される
釘(鉄)は錆びることで保持力を増すとあり、人体でいうと釘に組織がくっつく?とすると固定力を得るのに時間がかかります。
ネジ(螺子)Screw
- らせん(螺旋)のねじ山をもつ →抜けにくい
- 物をしっかりと密着させる
- ドライバーで回転させながらいれる
螺旋状のねじ山があることで固定力を得ています。
スクリューの種類
- コーティカルスクリュー
- キャンセラススクリュー
- キャニュレイテッドスクリュー
- ソリッドスクリュー
1.コーティカルスクリュー
特徴
- 皮質(cortical)骨用のスクリュー
- 2つの皮質骨を貫き固定する
骨の断面は皮質骨・海綿骨・皮質骨と並んでいます。
手前の皮質骨と反対側の皮質骨を抜くとネジが効くようになっています。
プレート越しにコーティカルスクリューを挿入する(2つの皮質を貫く)ことで
プレートを骨に引き寄せることができます
2.キャンセラススクリュー
特徴
- 海綿(cancellous)骨用のスクリュー
- 奥の皮質骨を貫けない場合に使用する
- ねじ山が高い、大きい、ねじ山同士の間隔が大きい
キャンセラススクリューは骨の反対側を抜かない時に使います。
具体的には反対側が関節(=軟骨)になっている場合です
関節内にはスクリューの先端を出さないようにするために、先端を海綿骨内にとどめる必要があります。
反対側は貫かないけど固定性はある程度欲しい場合に使います。
3.キャニュレイテッドスクリュー
キャニュレイテッドスクリューはスクリューが中空になっています。
打ちたい場所に、鋼線をあらかじめ挿入することができるのです。
鋼線を中空部に通してスクリューを打ち込みます。
要するに試し打ちができるということですね。
スクリューは何度も打ち直すと固定力が落ちることがありますので何度も大きいスクリューを挿入し直すことはできません。
キャニュレイテッドスクリューは最初にガイドピンと呼ばれる鋼線を刺入して、場所を確認してから長さを決め、ドリルで穴を掘り、スクリューを挿入することができるのです。なので色々なタイプの骨折で使用可能です。
スクリューが中空であることのデメリットはスクリュー自体の強度が落ちることぐらいだと思います。
複数本挿入できれば強度はカバーできます。
4.ソリッドスクリュー
これは中空でないスクリューという意味で、キャニュレイテッドスクリューの対義語のような意味です。
通常のスクリューと思っていただければいいです。
スクリューの使用方法
スクリューの使用方法としては以下のようになります。
- ドリリング
- タッピング
- スクリュー挿入
1.ドリリング
ドリルで骨に穴をあけます。
穴の長さを測り、使うスクリューの長さを決定します。
2.タッピング
スクリューにあるネジ山が通るらせん状の溝を掘ることをタッピングといます。
※硬いチタン製のスクリューでは不要、柔らかい吸収性のスクリューで使用する。
3.スクリューを挿入する。
スクリューを回しながらねじ込む
1-3の手順でスクリューを挿入しますが、
硬いチタン製のスクリューではセルフタッピングというものがあります。
セルフタッピングではドリルで穴をあけた後、スクリューを挿入するときに同時にタッピングを行います。
ねじ山を作りながらスクリューを挿入して固定性を確保できます。
また、セルフドリリングというものもあり、③のみというものもあります。
まとめ
いかがでしたか。
整形外科の手術に携わる方は一度は聞いたことのある単語だと思います。
理屈を知ると楽しいと思います。手術中の実物を見ながら参考にして下さい。