レバレッジETFの落とし穴~爆益の可能性だけど長期投資には向かない?
はじめに
みなさんはレバレッジETFというものは知っているでしょうか。
ETFは資産形成するうえでたくさんのメリットがあります。
そのETFの中でもレバレッジETFというものがあります。
また別のETFの種類としてインバースETFというものがあります。
これらのETFは通常のETFとは違った性質のものです。
まずはレバレッジETF・インバースETFの説明をしてからメリット・デメリットをみていきたいと思います。
有益な情報になるように頑張りたいと思います。
読んでいただければさいわいです。
レバレッジETFとは
レバレッジETFとはなんでしょうか。
まずETFは特定の指数に連動するように設定されている投資信託のことです。
上場されているため、市場が空いている間はいつでも取引できます。
代表的なETFとしては
VOO:S&P500(アメリカの代表する500社)に連動する株式指数
VTI:アメリカ全土で上場しているすべての企業に連動する株式指数
などがあります。
ETFには株式だけではなく、債券・金などもあります。
株式のセクター別のETFというものも作られています。
テクノロジー、金融などがあります。
レバレッジETFとは指数に連動する際に数倍の動きをするものになります。
例えば
- TQQQ:NASDAQの金融以外の代表企業100社に連動する指数の3倍の動きをするETF
- SOXL:NASDAQの半導体セクターの代表企業に連動する指数の3倍の動きをするETF
このようなものがあります。
この3倍というのは日次成績の3倍になるように設定されています。
1日ごとに連動する指数が動いた分の3倍動くようになります。
それぞれの値動きの様子を相場毎にみてみましょう。
値動きはわかりやすくするために大きくしてあります。
実際にはここまで大きく短期的に動くわけではありません。
また本来なら経費率もかかります。
実際には上昇相場の場合は3倍より小さい利益に、下落相場では3倍より大きい損失になります。
上昇相場
QQQ | TQQQ | |||
0日 | 100 | 100 | ||
1日 | 110 | 10.00% | 130 | 30.00% |
2日 | 130 | 18.18% | 200.9 | 54.55% |
3日 | 150 | 15.38% | 293.6 | 46.15% |
4日 | 200 | 33.33% | 587.3 | 100.00% |
下落相場
QQQ | TQQQ | |||
0日 | 100 | 100 | ||
1日 | 90 | -10.00% | 70 | -30.00% |
2日 | 85 | -5.56% | 58.3 | -16.67% |
3日 | 80 | -5.88% | 48.0 | -17.65% |
4日 | 77 | -3.75% | 42.6 | -11.25% |
ボックス相場
QQQ | TQQQ | |||
0日 | 100 | 100 | ||
1日 | 110 | 10.00% | 130 | 30.00% |
2日 | 100 | -9.09% | 94.5 | -27.27% |
3日 | 120 | 20.00% | 151.3 | 60.00% |
4日 | 110 | -8.33% | 113.5 | -25.00% |
グラフで見ると値動きがわかりやすくなります。
上昇相場では5日間でQQQが2倍になっている間にTQQQは5倍以上上がっています。
下落相場ではQQQは23%減少に対してTQQQは50%以上下落しています。
インバースETFとは
インバースとは『逆の』という意味です。
インバースETFの特徴は
- 連動する指数が上昇すればインバースETFは下落する
- 連動する指数が下落すればインバースETFは上昇する
まさに逆の動きをしています。
株式市場は長期的にみれば常に上昇しています。
つまり株式は持っていれば上昇していきます。
インバースETFは指数が上昇してしまうと損失がでてしまいます。
逆に指数が下落すると利益を得ることができます。
下落すればするほどインバースETFをもっていれば利益を得ることができるということです。
難しいですが、下落するとわかっていれば利益を出すことができるのです。
レバレッジETFの落とし穴
レバレッジETFは大きな利益を狙うことができますが、デメリットもあります。
それらをみていきましょう。
レバレッジ型・インバース型 ETF 等への投資にあたってご注意ください
レバレッジETFについては金融庁は情報を流しています。
- レバレッジETFは短期売買に向いていること
- レバレッジETFはリスクを伴う商品であること
これらの注意喚起のためにレポートを公開しています。
レバレッジETFの落とし穴になるところをみていきましょう。
- からなず〇倍の値動きになる
- 長期投資に向いている
- ETFは低コストである
それぞれみていきましょう。
1.かならず〇倍の値動きになる
これは金融庁も注意を周知しています。
金融庁の提示している図から引用します。
指数とレバレッジ指数の値動きを表したものになります。
ここではレバレッジ指数は2倍の値動きになるように設定されています。
1日目に指数が20%下落して、レバレッジ指数は40%下落しています。
2日目には指数が25%上昇して、レバレッジ指数は50%上昇しました。
これをみるとしっかり2倍の値動きになっています。
しかし価格に注目してみましょう。
基準日の100から1日目は
- 指数は20%下落して80
- レバレッジ指数は40%下落して60
になっています。
2日目には
- 指数は25%上昇して100
- レバレッジ指数は50%上昇して90
割合としては必ず2倍の値動きになっていますが、値段としては一致していません。
指数では80に対して25%上昇で100
レバレッジ指数は60に対して50%上昇で90です。
2倍の値動きになるといっても元の指数が小さければ効果は小さくなります。
2.長期投資に向いている。
株式市場は長期的に見れば右肩上がりで上昇しています。
S&P500は1981年8月から2021年8月までに35倍に増えています。
暴落する相場、長期で続くボックス相場など様々ありますが、最終的には増えているのです。
長期的に増えるならレバレッジをかければ効率よく増やせるのではないか
このように考える人も出てきます。
しかしこれは必ずしも正しいわけではありません。
1.のところで述べたように値動きが2倍になると言っても値動きの割合が2倍になります。
価格自体が2倍の値動きをしているわけではありません。
長期のボックス相場で元本が減ることが続くと、必ずしも右肩上がりで増えるわけではありません。
また投資をやっている以上必ず暴落という場面に直面します。
直近のコロナショックでは30%以上の株価暴落がありました。
指数が30%下落するということは60~90%程度下落するということもありえます。
1000万円の資産をすべて3倍の値動きをするETFを保有しているときに、
指数が30%下落の相場が訪れたときには持っている資産は100万円になってしまいます。
長期投資のポイントは利益を大きくすることも大切ですが、市場から退場しないことです。
市場から退場しなければ資産は複利によって勝手に増えていきます。
1000万円が100万円になって売ってしまって退場してしまえば増やす機会を失います。
前回のコロナショックでは市場にたくさんのお金が流れ込んだことで株式市場は急速に回復しました。
この恩恵を受けた結果がレバレッジETFが大きく伸びた結果とも言えます。
このような上昇・下落のタイミングというのは誰にも分りません。
- 暴落がこないだろう
- ずっとこのまま上昇していくだろう
こんな保証はどこにもないのです。
3.ETFは低コストである
ETFは低コストという特徴があります。
VOOの経費率は0.03%とされています。
投資信託では1%を超えるものもあります。
コストは小さければ小さいほどいいものです。
同じ5%のリターンのあるETF(コスト:0.03%)と投資信託(コスト:1.00%)があったとします。
それぞれ経費率を差し引くと
- ETF :4.97%
- 投資信託:4%
1000万円を投資していた場合、ETFでは49万7千円に対して投資信託は40万円です。
10万円近い差になります。これがずっとかかり続けることになります。
10万円の差は複利の効果でさらに大きくなっていきます。
それだけ低コストであることは大切なのです。
TQQQとQQQを比較してみましょう。
TQQQ | QQQ | |
0.95% | 経費率 | 0.20% |
約1.4兆円 | 運用資産額 | 約20兆円 |
0.75%の差があります。
0.75%でも長期保有の際には大きな差になります。
経費率は1.のところにも関係します。
必ず〇倍になるということもないようにコストも価格に反映されます。
上昇相場で3倍増えたとしても実際にはコストもかかります。
つまりここからも必ず3倍に増えるわけではありません。
コストについては反対意見もあるかもしれません
レバレッジETFは短期売買だから長期のコストなんて関係ない
この意見も正しいと言えます。
これは目的の違いと言えます。
長期投資を目的にしている場合はレバレッジETFは向かない設定がされています。
逆に短期投資の場合にはリスクを負って大きく増やすことができる可能性があります。
ここまでのまとめ
ここまでのまとめとしてレバレッジETFは難しい商品といえます。
投資初心者が簡単に手を出せる商品ではありません。
レバレッジETFで莫大な利益を出した人がいるのは事実です。
TQQQはコロナショックの底値からは7倍以上増えています。
1000万円を入れていたら7000万円になっています。
1年間でFIREも視野に入れることができます。
しかしここまで見てきたようにレバレッジETFは値動きの大きな商品です。
資産形成で大切なのは市場から退場しないことです。
レバレッジETFで増やすことができた人はリスクを大きくとることができる人だったのです。
底値の話をしましたが、そのときが底値であるかは誰にもわかりません。
底値であるかもわからないところにお金をつぎ込むことにはリスクが伴います。
今後必ず利益が出るかもわかりません。
しかしここでは『レバレッジETFに手を出すな』というわけではありません。
レバレッジETFについてのリスクや今後の展望などはっきりさせている状態ならいいと思います。
普通のETFもしっかり勉強したうえで保有する方がいいです。
レバレッジETFはさらに考えて保有するべき上級者の投資商品と言えます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
レバレッジETFは難しいですが、大きな利益が狙える商品と言えます。
コア・サテライト戦略としてのサテライト資産として狙ってみるのは面白いかもしれません。
通常のVOO・VTIなどでも十分利益を伸ばすことができるのは事実です。
私はサテライト資産として仮想通貨を保有しています。
仮想通貨はボラティリティが大きいですが、その分見ていて楽しい部分があります。
私は現在レバレッジETFには手をだしていません。
アセットアロケーションを見直す際に保有を検討してみてもいいかなと思いました。
みなさんも投資する際にはリスクには十分気をつけて保有するようにしましょう。
読んでいただきありがとうございました。